撃ち殺すよ

shinakosan

2008年05月15日 09:49

怒りで涙が出た。
ここは沖縄だ、沖縄の言葉を使って何が悪い。


http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805141300_01.html
米軍解雇 無効と提訴へ/元従業員、国相手に
 
 米軍キャンプ瑞慶覧(北中城村)にある在沖米海兵隊福利厚生施設MCCSの元従業員安里治さん(46)が、米国人上司からパワーハラスメントを繰り返され、不当に解雇されたとして、二十二日にも国を相手に解雇処分取り消しを求める訴訟を提起する。十三日、沖縄防衛局を訪れ、趣旨に賛同する同僚や支援者ら五千七百三十二人分の署名を提出した。
 
 安里さんによると、二〇〇三年ごろからパワハラを受け、心身に不調を来した。同様に嫌がらせを受けたという別の上司に対し、慰める目的で方言で「何かあればウチクルスサー」と発言したところ、上司に報告され、米軍側から「殺すと脅迫した」と見なされた。

 〇七年、暫定出勤停止処分、その後も「職場の秩序を乱した」との訓戒を受け、弁明書や苦情申し立ても却下されたという。同年十二月、懲戒解雇処分となった。

 十三日、防衛局側と面会した安里さんは「防衛局は独自に調べず、『米軍の調査を基に解雇を決定した』と明言した。雇用主としての誠意が見られず、責任も果たしていない」と批判。「米国人上司の都合で嫌がらせを受けて苦しむ仲間がたくさんいる。司法に訴えることで人権を取り戻し、これ以上被害者を出さないようにしたい」と訴えた。

 同行した全駐労マリン支部の仲里修委員長は「裁判に向け、支部として可能な限りの支援態勢をつくっていきたい」と話した。安里さんの解雇をめぐっては、全駐労組合員を中心に地域住民などが撤回を求めて署名した。

 米軍基地従業員の解雇の最終責任の所在について、沖縄防衛局は「日米間で合意した労務提供契約に基づき手続きが行われ、日米が合意した場合に、従業員への解雇を含む制裁措置が取られる」としている。

 米軍側は安里さんへの解雇予告通知書で、上司や同僚への聞き取りなどから「殺す、もしくは危害を加える、という脅迫は深刻で信じるべきである」と結論付けている。


琉球語は、
7世紀頃に古い日本語と枝分かれして発達した言語だと言われている。
当然、現代の日本語と祖語を共にするので、
語彙が音声的に対応関係にあったりするけど
意味が完全に一致しているとは限らない。
例えば、
a,i,u,e,oがa,i,u,i,uになる
aに挟まれたwが脱落する
kiが口蓋化してchiになる

という琉球語のルールを当てはめたら沖縄がウチナーになる。
o ki nawa
↓↓  ↓
u chi naa

これは音声の話。
でも意味論は違っていて、
例えば、日本語の「川」は
kawaだからaに挟まれたwが抜けて「カー、kaa」になるけど、
「カー」の意味は、国立国語研究所編『沖縄語辞典』によると
井戸。また、天然に湧いていて用水に使われるものをもさす。クルマガー kurumagaa ( 車井戸)、チーガー Ciigaa ( 桶を手でたぐり上げて汲む井戸。『釣瓶井戸』)、フィージャーガー hwiizaagaa(湧き水を樋で引いたもの)、タチジャー 『tacizaa ([滝川]崖の中腹から湧泉で樋をかけていないもの。)』などの種類がある。

であって、
完全に日本語の「川」と対応するわけではないことが分かる。
そこで、問題の「クルス」だが、
確かに「クルス、kurusu」は日本語の「コロス、殺す、korosu」と対応している、
だけど、同じく『沖縄語辞典』によると、
[1]殺す。主として動物を殺すのにいう。
ソーグヮチウヮー クルスン。soogwaciwaa kurusuN.正月用の豚を殺す。
[2]打つ。なぐる。タタックルスン tataQkurusjuN などともいう。やや乱暴な語。上品には アティユン atijuNという。また、これに対し ショーグルシ sjoogurusi ( ほんとうに殺すこと) という語がある。

とあり、
今回、安里さんは人間に対してこの言葉を発しているため、
[1]の「殺す」の意味は成り立たたなくなり、
自動的に[2]の「打つ、なぐる」の意味で発せられていることになる。
やや乱暴な言葉とあるが、沖縄では幼稚園児の喧嘩でも使われる言葉だ。
辞典によっては「懲らしめる」という訳をつけているし、
私が「何かあればウチクルスサー」を訳すとすれば、
「アイツめ何かあったら僕は許さないからな」か、
「これ以上何かしたらオレが黙っていないからな」
という感じ、本人がいない時に誰かに愚痴を言うニュアンスだ。
勿論、文句を言うときの言葉なので丁寧なものではない、
しかし「ウチクルス」を発した人が、
「殺すと脅迫した」と見なされるのはどう考えても異常だ。
それがまかり通るなら、
「fuck」を連発するアメリカ人は全て
「レイプを予告する危険人物」として解雇されなくてはならないだろう。
パワハラで実際に安里さんを精神的に追い詰めた上司が、
沖縄人が沖縄で使う沖縄の言葉を誤訳し職を剥奪するというのは、
言語差別でありパワーハラスメントである。
解雇の決断にGOサインをだした沖縄防衛局もまた、
沖縄の言語文化を理解しないまま「制裁」処置を施したとして同罪だ。
安里さんのために私が出来ることがないだろうか。
沖縄の言語を学ぶ者としてとてもじゃないけど許せない事件だ。