「犬のように扱われた」彼女の訴えを聴こう

shinakosan

2009年03月06日 15:21

「犬のように扱われた」彼女の訴えを聴こうという衝撃的なタイトルの文章を、blog「癒しの島から冷やしの島へ」の24wacky氏が書いていた。

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本日の沖縄タイムスは、昨年2月沖縄市で米兵に強姦されたフィリピン人女性へのインタビュー記事を掲載している。この事件は、先月24日に米軍嘉手納基地で開かれた高等軍法会議において、強姦罪への起訴が取り下げられた。それまで彼女は法廷で証言をしようと練習を重ねていたという。裁判で訴える機会を奪われた被害女性は、帰国直前のインタビューの中で、表現し尽くせない怒りと疲れと、そして今後も続く恐怖について最後の力をふり絞るように語っている。その中から一部転載する。

1年間で最もつらかったのは「捜査で何度も話さないといけないことだった。日本と米軍の捜査機関と弁護士に、繰り返し話した。米兵とどう会って、何を話し、ホテルで具体的に何をされたか、とても詳しく聞かれた。相手の性器の大きさ、どこをどう触られたかとか。毎回薬を飲んでから行ったけど、泣きながら質問に答えた」。

実際に事件現場となったホテルの部屋で、当時の動作を再現しなければならないこともあった。何度もよみがえる恐怖に苦しめられ、「死んでもいい、と思うときもあった」。


一方、最終弁論で弁護側はこういったという。「彼はとてもいい兵士だったが、アジアの性産業にはまってしまった」。

「もし私が貧しくなくてお金が十分にあれば、仕事のために沖縄に来る必要はなかった。そしたら事件にも遭わなかったはず。貧しいということ、女性ということ、すべてを見下されている気分です」。 

帰国後は、どう過ごしていいか分からない。周囲の目が怖くて、実家には戻れない。事件はフィリピンでも大きく報道されてきたため「実名は出ていないけど、皆が自分のことを知っている気がする。他人と目が合うと怖い」。いつも誰かに後ろ指をさされ、うわさ話をされていると感じてしまうという。



動揺する気持ちが冷静に整理されているが、実際のインタビューは、ため息があり、言い淀みがあり、沈黙があったことを想像させる。しかし、それらを含め、最終的にこのような記事が成立するのは、彼女と取材する比屋根麻里乃記者との間に容易でない信頼関係があることが前提である。記事の最後はこう締め括られている。
 
「法廷で証言できなかった私の気持ちを伝えてほしい。話すのはつらいけど、被告側の話だけを聞いた不公平さを訴えるためには、取材を受けることが最後に唯一できることなのです」



「最後に唯一できること」が「取材」なのだという言葉は、メディアに携わる者にとってとても重い。それがこの記事のすべてだといってもよい。使命感をもったであろう比屋根記者はその訴えをしっかりと受けとめ、我々に伝えてくれた。その記事は、夕刊廃止に伴い今月からリニューアルされた沖縄タイムスの「くらし」面に掲載されている。内容からして通常であれば24,25頁の「社会面」に載るべきだろうが、「小沢氏秘書逮捕」にはじかれたのかもしれない。だがそれよりも、デザインも書体も他の記事内容もソフトな「くらし」面に守られているようでこちらの方が良かったのだ、などと思うのはナイーブな私だけだろうか。

サイトに載らない小さな記事、しかし読まれることを求めている記事は実はたくさんある。この記事もそうである。沖縄タイムス、琉球新報の紙新聞を読む機会に恵まれない本土の読者へ、主にあなたたちへ伝えるためにわたしはこの記事を紹介している。どうぞ彼女の訴えを受けとめて下さい。そしてこのことを周りの人に伝えて下さい。

彼女はこの1年間、沖縄島で生活した。その1年間わたしも同じ島で生活し、同じ空気を吸っていた。この1年間の彼女の想いのほんの一部分でもわたしは受けとめ、そして次の1年もその想いを更新しよう。



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出血多量の状態で保護されたレイプ被害者に「アジアの性産業」というレッテルを貼り、裁判で証言する機会さえ与えず、レイプではなく「隊長命令に反して一人で基地外に出た罪」で加害者を裁く米軍。彼女にとって、「沖縄」は、「癒しの島」ではなく「加害の島」だ。そんな沖縄を、私たちは、今日も維持している、維持させられている。

月曜に米国国務省に出向いた際、日本担当のスタッフは、興奮して耳まで真っ赤にしながらすごい剣幕で、「ラムズフェルドの掛け声の下、米軍は立ち上がった、性暴力の根絶に向け我々はすでに、必死に努力を重ねてる」と言った。しかし、努力がなされているとは到底思えない。14歳へのレイプ事件には懲役三年、その一週間後に起ったこの事件には、懲役6か月の刑しか下さなかった米軍。これがアメリカの「努力」の賜物だというのだろうか。

「犬のように扱われた」彼女の訴えを聴こう、と呼びかけてくださった24wacky氏に感謝、私も彼と同じように、彼女に耳を傾けたい。