2007年05月16日

基地があるということ

沖縄タイムス
2007年5月15日(火) 朝刊 28面


事件・事故58%が沖縄/全国施設局内で最多
 二〇〇五年度に那覇防衛施設局管内で起きた米軍人・軍属による事件・事故は千十二件に上り、全国八カ所の施設局管内で最も多く、全体の57・6%を占めたことが十四日、「米軍人・軍属による事件被害者の会」(海老原大祐代表)のまとめで分かった。このうち「公務外」は九百二十五件だったが、日米地位協定に基づき米政府が被害者に慰謝料を支払ったケースは十件にとどまった。
 過去五年の事件・事故では、〇三年度の千百五十九件(うち公務外九百九十一件)が最多。〇四年度は千十件(同九百十八件)に減少したが、〇五年度は再び増えた。
 同年度に二番目に多かった横浜防衛施設局管内は計三百三十四件(公務外二百五十七件)で、那覇の約三分の一だった。
 「発生件数」と「支払件数」が大きくかけ離れているのは、公務外の事件事故は当事者間の示談交渉が原則だからだ。
 一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終合意は、すべての在日米軍人とその家族、軍属に任意自動車保険の加入を義務付けており、那覇防衛施設局は「公務外事故のほとんどは、任意保険で解決されている」と説明している。
 これに対し、海老原代表らは「加害者が示談交渉中に本国に逃げ帰ったり、保険に加入していなかったりするケースも多い。被害者の視点に立った対策を早急に整備すべきだ」と訴える。




沖縄は基地だらけ。37の米軍施設236,812,000㎡がフェンスで囲まれていて私たちは入れない。嘉手納町にいたっては住民の住居面積は17%で83%は基地面積という始末。フェンスの中と外。今日は「基地があるということ」をテーマに書いてみます。

沖縄市に生まれた団地っ子だった私は、フェンスの中の広大な青々とした芝の上にある見たこともないくらい大きくてカラフルな遊具で遊ぶ金髪の少女たちが羨ましくて仕方がなかった。母に「沖縄の中に基地があるの?基地の中に沖縄があるの?」と聞いたりした。

大人になって58号線をドライブなんかする時、ずーっと伸びる国道の両脇にこれまたずーっと伸びるフェンスがあって、「あぁ基地の中を通らせてもらってるな」という気持ちになったりした。私の大学の隣の大学に米軍のヘリコブターが落ちた時、必死に友人の安否を確認したあの日も「基地があるということ」を実感した。

だけど、正直、毎日毎日「基地があるということ」を考えているわけではない。私が生まれるずっとずっと前からある米軍基地。私には騒音もレイプも米軍機の事故も土壌汚染も平和集会も反基地運動もある意味「当たり前」のよくある風景で日常で、恋愛に忙しかったり論文に終われてたりすると、「そう毎日は米軍基地のこと考えてはいられないってば」とニュースをスルーしちゃうことだってある。

それだけ報道しないといけない米軍基地のニュースが沢山あるってことでもあるんだけどね。

私は時々本気で怒ったり、時に軽く流したりしながら米軍基地と共に生きてきた。

私が最初にアメリカに留学したとき、私は初めてアメリカ人=米兵じゃないってことを知った。(17才になるまで私は米兵じゃないアメリカ人を3人くらいしか見たことがなかった。)初めて「ミリタリーって嫌い、僕には関係のない世界」と言うアメリカ人に会った時には思わず殴りかかりそうになった。「アンタが知らない間にアンタの国の兵隊が沖縄で少女をレイプしてる」と殴る代わりに泣いて訴えた。アメリカ人はミリタリーを知らなすぎると思った。

「大学に行きたい、それに家族を養いたいから僕は軍人になる」という中米から移民してきた同級生と話したと時は切なくて苦しくて部屋に帰って泣いた。私は彼を責めることはできなかった、「貧乏人は徴兵されろ」という制度を作ったのは彼じゃない。

麻薬で捕まって裁判官に「牢屋に入るかそれとも海兵隊に入るか?」と聞かれ「じゃぁマリーンで」と言った同級生と、不良少年の厚生施設として軍隊を提供した裁判官のことは憎いと思った。

いろんな人がいろんな理由で米兵になることが分かった。

ちなみに私がそうやって高校時代に留学できたのはSACO合意が関係あるのだけど、1995年に起きた少女暴行事件をきっかけにクリントン・橋本・太田が会談した際、沖縄の高校生を一年間アメリカに派遣するというプログラムを作った。私はそれの一期生で、だから私のキャリアはレイプされた少女の犠牲からスタートしているという自覚がある。

私は絶対に一生、沖縄の「基地があるということ」を見て、そこから発生する問題を考えようと思ってる。

話を最初の新聞記事のところまでぐっと戻すと、沖縄には「基地があるということ」をはっきり示す犯罪が多い。年に1000件以上の被害というのは多すぎる、それも9割以上は公務外の事故・犯罪。慰謝料貰えたのが1012件中10件というのはちっとも意味が分からない。沖縄って法治国家?治外法権って今もあるわけ?

性犯罪にいたっては本当はもっとずっと多いんだろうな。私の友達にもレイプ被害者がいる。今私が住んでる英国だと夫婦間でもレイプが成り立つ。確かに英国はレイプ犯罪は多いけど、被害者がしっかり訴えられるような制度を頑張って作ってる。だけど狭い沖縄で仮にレイプされたと訴訟を起こすともう沖縄では住まれなくなってしまうと友達は言った。泣き寝入り、私は彼女を説得できなかった。沖縄には性被害者が安心して被害を訴えられる土壌がまだ、ない。

03年から被害が多くなってることはイラク戦争と関係があると私は思う。私たちは基地に入れないけど米兵たちは基地から出ることができる。

仕事が終わりクーラーの効いた部屋でフライドチキンを食べながら大音量で音楽を流し仲間と集まってプレイステーションで遊び綺麗な女の子と恋をする、そんな日常を過ごした米兵たちが「明日イラクに行け」という宣告をされる。どいういう気分だろう?

それから、イラクから帰ってきた帰還兵たちも沢山沖縄にいる。米国本土で問題になっている帰還兵のメンタルヘルスの問題、沖縄には彼らをフェンスの中に留めて置く権限はない。

感情を押し殺して戦場に向かう兵士、戦場から生きて帰ってきた精神を病む兵士、彼らを見て心を痛める明日はわが身の兵士、彼らは今日も自由にフェンスの外側を歩く。これが「基地があるということ」。

一体全体誰が悪いんだろう?

私はやっぱり戦争を知らないくせに、基地の街を知らないくせにいっちょまえに政治や軍事を語る想像力の乏しい自分勝手な政治家と彼らを支援する資産家が悪いと思う。戦争にならないような、敵視されないような政治ができなかったくせに、「国防」だの「平和」だのを口にして戦争に突入していくアメリカ。当たり前のように軍事費を増し世界中の米軍基地を強化し世界の警察気取りのアメリカ。でもってアメリカを動かしているのは一滴の血も流すことのない腹の黒い政治家。

沖縄にほとんどの米軍基地を押し付け知らん顔している日本政府も悪い。日本の政治家のほとんどは自分の子どもたちが米兵にレイプされたり、米軍機が墜落して死ぬかもしれないなんて考えたことがないだろうな。そして辺野古の青く美しい珊瑚とじゅごんの海を見たこともないだろうな、あの湾を見たこともないのに「仕方ない」というのは罪だよ。あれを見たら絶対「基地建設」なんて言葉を発せないはず、あまりにも美しのだもん。

「基地があるということ」はおかしいという事ってことをことあるごとに考えないといけないなと思った。
「基地があるということ」はおかしいという事ってことをことあるごとに伝えないといけないと思った。



Posted by shinakosan at 10:14│Comments(7)
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[辺野古]無法国家の夜明け【ミクロネシアの小さな島・ヤップより】at 2007年05月19日 12:18

げーーーーーーーっ、もうサンゴが壊されている?!

琉球朝日放送によると、沖縄防衛施設局が19日と20日に
機材を設置した場所でサンゴの損傷が確認されたとのこと。
何のための環境アセスメント?、海猿、御用メディア・・・【billabong】at 2007年05月22日 01:00
この記事へのコメント
いつもいつもshinaの日記には考えさせられるわ。
いっつもコメントしたいんだけど、あたしゃぁ、難しいことも良くわからないし、良いコメントが出来そうにないので、一人モクモクと色々考えてるよ。
たくさん考える機会を与えてくれてありがとうね♪

カナも、お偉いさんとかは、家族に被害者がいないからそんな軽いことが言えるのよ~って思っちゃうよ。
沖縄だけでなく、問題とされているところにホームステイしてみなさい。って思うなー。
Posted by cana at 2007年05月17日 22:46
shinakosann、こんにちは。

1970年以来外国生活をしている僕は、すでにヤマトンチュウですらありません。これはある意味で沖縄を見るためにはよかったと思っています。僕が外国に移住せず、ずっとヤマトで生活をしていたら、いまのように沖縄を見ることが出来るか自信は有りません。

沖縄で起きている米兵による犯罪は、新聞で報道されている件数の何倍もあるのではと想像します。政治家や資本家たちは、当然沖縄の現実を知らないでしょう。一目沖縄を見れば、沖縄の置かれた状況がいかに異常であるか分かるはずです。58号線を車で走り、その広大な基地面積と、その周りを囲むように建つ民家を見れば、普通の感受性を持つ人間ならなんとかしなければと思うはずです。

そして、その民家の上を間断なく飛び交う軍用機の騒音を聞けばね・・。
しかし、彼らに普通の人間が持つ感受性を期待できるかどうか・・(>_<)

愚痴を言っても始まりませんね。沖縄を愛するものとして、僕たちは力はなくとも発言し続けなければなりません。

諦めることなく、発言し続けましょうね(^_^)v
Posted by うりずん at 2007年05月18日 02:22
>cana
  政治家はまず嘉手納に住めと思う。沖縄市で生まれ育った私でさえ、那覇に引っ越してからは、ちょくちょく沖縄市に帰る度、いちいち軍用機の音にびびってしまう。でも沖縄市の皆は平気なんだよね、慣れてるから。ものすごい恐ろしいことだって思います。ゲート2の前に豪華な家でも建てて、首相になる人の家族は必ずそこにすまないといけないということにしたらいいかもねー。
 コメントしてくれてありがとうさん!コメントいただけると「書いててよかったわ☆」って思うよ!


>うりずんさん
 うりずんさん、コメントありがとうございます! 
 そうそう、『普通』という言葉の定義が難しい。何が『普通』で何が『普通でない』のか、中にいると分からなくなってしまいます。私も沖縄を離れる機会があってある意味では良かったと思います。まずは県民の意識をあげること、県民が「僕たちの普通は実は普通でないらしい」と気がつくことが大事ですね。お金も地位もないけれど、私にはPCと時間があるので事あるごとに発信していこうと思いますよ。諦めて沖縄に住むのは沖縄に悪い気がするもの。
 海外にいると見えてくる日本や沖縄というものがありますよね、私はちょこっとだけ外側にお邪魔していますが、うりずんさんのようにどっしり海外に根を下ろしている方の視線でそれらを見るとまた違うんだろうなぁ。勉強させてくださいね!
Posted by shinakosan at 2007年05月18日 07:44
はじめまして。TBありがとうございました。

首都圏に住んでいる私には、沖縄で生まれ育った方の「生活の実感」をなかなか知ることができなかったので、大変考えさせられました。
今一緒に仕事をしている沖縄出身・海外3カ国での留学生活経験を持つ友人ともよく基地についての話をします。

shinakosanがお書きになっている通り、政治や世界情勢も関わって米軍基地の問題は複雑なので、友人と話をしていても結論なんて出やしないんですが、いろいろな視点で少しでも問題点を考えてみたいと思っています。
基地周辺以外の場所に住んでいる人間が無関心でいることが一番いけないと思いますから。
Posted by ねこねこ at 2007年05月19日 12:29
>ねこねこさん
 コメントありがとうございます。TBもさせていただいて本当にお世話になっています。
 今は沖縄にいないので「生活の実感」がないのは残念ですが、外に出て「今まで気が付かなかった沖縄の姿」というのに出会うこともあるだろうと信じてます。
 これまで無関心の人に「無関心だ!許せない!」と怒ってたのですが、最近は「何故無関心になるのか?興味を沸かせないファクターがあるに違いない!」と感じて、「逆にそっちの方が怖いじゃん!」と焦りながら政府の動向や報道の様子なんかを見てます。ブログなどで草の根的に発信していくことも無意味ではないかも!って思ってます。
 またお邪魔させてくださいね☆
Posted by shinakosan at 2007年05月20日 19:39
はじめてこちらにカキコします。綺麗な海や自然しかとりあげられないから、沖縄に住むってこと、大きな基地の近くに住むってこと想像できない沖縄以外に住む私たちなので、この記事は大変、貴重です。

>イラクから帰ってきた帰還兵たちも沢山沖縄にいる。米国本土で問題になっている帰還兵のメンタルヘルスの問題、沖縄には彼らをフェンスの中に留めて置く権限はない。

これって野放しですよね~。悪いことしても、日本の法律は適応されないんでしょう?それに、イラクに行く兵士はますます質が悪くなってきているみたいし、帰ってきたらさらにひどいだろうなぁ。。

非戦闘地域といってはじまったイラクの自衛隊派遣、さらに2年延長がきまった。大量破壊兵器もみつからなかったことに対して与党は説明もせず、安倍政権はひたすらブッシュのポチ。なんとかすき放題をやめさせねばね☆
Posted by あずーる at 2007年05月22日 01:12
>あずーるさん

blogにも遊びに来てくださってありがとうございます。うれしいなぁ。
「悪いことしても、日本の法律は適応されないんでしょう?」
↑とりあえずされますよ!手続きが面倒なのと公務中なら日本の警察が関与できないのと、ややこしいから示談に持ち込むパターンが多いのですけどね。慰謝料もらえたのは10人ってことらしいです。

大量破壊兵器が見つからなかったからブレアは辞退に追いやられたのに小泉は安部に変わって余計にブッシュのポチになってるジャン!って怖くなります。
Posted by shinakosan at 2007年05月22日 02:38
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