2008年01月28日

ジュゴン訴訟

勝ちましたね、ジュゴン訴訟!

まだまだ生態がベールに包まれているプリプリッとして愛らしいジュゴンが沖縄の辺野古という海に住んでいます。辺野古は世界でもジュゴンの住める一番北の場所、素晴らしい藻場やサンゴがあって、漁港から海に向かって右だけ見てれば「ここは天国かしら」と思っちゃうかもしれないけれど、左を見たら白い砂浜にグルグル巻きの鉄条網が転がっていたり、水陸両用戦車が海からドバッとあがってきたり、普天間基地から飛んできた米軍ヘリがバタバタと降りてきたりで「ここは地獄かしら」と思っちゃうかもしれません。なんか「境界線」って感じです。

日米のSACO合意というのがあって、それで在沖米軍基地の整理縮小が言われた時「やった!」と思いました、「これでやっと沖縄も平和になるぞ」ってね。だけどさすがは政府、それは単なるリップサービスで、その内容って言うのは60年経って古くて使い物にならなくなった施設や60年汚染し続けていちいち原状回復していたらお金がいくらあっても足りなくなる土地を今のうち沖縄に返そう、そして土地を返還してあげる代わりに新しく山を切り崩し海を埋め立てて21世紀バージョンの最新鋭の武器や戦闘機を配備させてくれよというプランです。「なんだそれ?」って思うでしょう?

そしてジュゴンの住む海を埋め立てて滑走路を作ろうという話になりました。

「マイバックを持ちましょう」「水は限りある資源です」「地球温暖化問題に取り組もう」と言いながら、環境庁を環境省に昇格させながら、ジュゴンを天然記念物に指定しながら、日本で唯一ジュゴンの住める海を外国の基地建設のために埋め立てようというのは実に可笑しいですね。日本政府に訴えるだけでは埒が明きませんので、政府へ訴えるのと同時進行で、そもそもの原因の米国防衛省をカリフォルニア州の連邦地裁で訴えるという訴訟が起こりました。その原告にはあのジュゴンも入っていたことで脚光を浴び、その名も「ジュゴン訴訟」と呼ばれるようになりました☆

それでね、ジュゴン保護を求めた「自然の権利」訴訟だったのだけど「ジュゴンは文化財じゃないでしょ」と言われたりしていたのですけど、なーんとジュゴン訴訟、勝訴いたしました☆地裁は米防衛省に生態系への影響を考慮するよう命令を出したり、アセスの方法書の提出をもとめたりしました。普通に考えたら自国の軍隊が外国に新基地を作ることでその国に住む世界的な絶滅危惧種が死ぬことになったら「そんなの良くない」となるのですが、国家とか軍事とか政治とかが絡むとそうとも言えないややこしい感じになってくるわけです。それなのにジュゴン訴訟勝ちました!勿論祝杯をあげましたよー。

決め手となったは政府の行為が文化財に影響を与える場合事前に保護策を検討するように求める「米国歴史保存法(NHPA)」っていうやつの適応です。今回は絶滅危惧種のジュゴンを文化財と認めてそれを保護するようにアメリカが考えたということですけど、日本政府はちっともそういう風に考えていないので、この間も「なんちゃってアセス方法書」を提出して怒られていましたね。学問や環境問題や市民団体を軽視する日本政府の姿がありありと浮かんだと思います。町村官房長官は記者会見で「よその国の裁判のことでありしかもまだ係争中だ。日本政府としてコメントすることは適切ではない。日米両政府が合意した案はジュゴンを含む自然環境への影響をできる限り少なくする配慮もあって出来上がった。一日も早く移設を進めるとの政府の大方針に沿ってしっかりやっていきたい。」と言いました。

どうして官房長官は日本の天然記念物の住む海を、日本人の納めた税金を使って国土に新たな米国軍の基地を作ることで「破壊」することに躍起になるのでしょう?そしてどうして地元メディア以外はこの記事を大きく取り上げないのでしょう?どうしてこの勝訴のニュースがmixiニュースのトップに載らないのでしょうか?米国防衛省が敗訴したことは「再生紙偽装さらなる調査必要、環境省」というニュースより小さなニュースなのでしょうか?そこら辺りの感覚が私には分からないです。ジュゴン訴訟勝訴のニュースはどのスポーツ中継よりもエキサイティングでビールを美味しくさせるものなのになあと思うと不思議です。

今からでも米国防衛省敗訴の事実は変わりませんので、まだ祝杯を挙げていらっしゃらない方で美味しいビールの飲みたい方は是非下記のリンクなどを読んで辺野古のジュゴンを想像してグラスを仰いでくださいませ。これからもまだまだ問題解決まで長い長い道のりが続いていますけど、ここで心の底からリラックスして素直に嬉しいという気持ちになれたこと、本当に嬉しく思います。原告の人間の皆さん、ジュゴンやその他の絶滅危惧種の皆さんどうもありがとうございました。



「自然の権利」
沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟 原告紹介 


UNITED STATES DISTRICT COURT NORTHERN DISTRICT OF CALIFORNIA
判決全文Case 3:03-cv-04350-MHP Document 119


EARTHJUSTIS
Federal Judge Rules Against U.S. Defense Department Plans for Airbase in Habitat of Okinawa Dugong

the International Herald Tribune
U.S. military must consider Japan base's impact on "sea cow" marine mammal

沖縄タイムス
米国防総省が敗訴/沖縄ジュゴン訴訟

琉球新報
ジュゴン影響調査命令 米連邦地裁が判決

朝日新聞
米地裁、米政府にジュゴン調査命じる 普天間移設めぐり

読売新聞
ジュゴン巡る米連邦地裁命令、官房長官「コメントせず」


中日新聞
ジュゴンへの影響考慮を普天埋設で米地裁命令




Posted by shinakosan at 02:57│Comments(2)
この記事へのコメント
一月以上も経過してのレスですみません。SHINAKOさんが紹介してくれた原告団は、2001年時点の原告予定者で、2003年9月の提訴時には以下の原告になりました。
http://homepage3.nifty.com/sizennokenri/Dugong/DUG030926profJ.html

アメリカの自然保護団体と弁護士の全面的は協力の下での訴訟です。
勿論、立ち上がりの資金を準備した「自然の権利基金」、
訴状の準備をした日本の「環境法律家連盟」の働きがあってのことです。
Posted by okinawa_maxi at 2008年03月06日 16:28
> okinawa_maxiさん
 おおおーごめんなさい。それでは追記で訂正させていただきます。
 最近お目にかかる機会がございませんがいかがお過ごしですか?
 
Posted by shinakosanshinakosan at 2008年03月12日 11:23
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