2008年04月04日

Enough means Enough③

その日は土砂降りの雨だった。
3.23米兵によるあらゆる事件事故に抗議する県民大会。

6年前在日米海軍兵から性暴行を受けたことを、
ジェーンさん(仮名)は6000人を前に話した。
「性暴力は性交渉ではない。」と言った。
私たちは知った。
そのことを私達は本当には理解していなかったのだということを、
だから暴行事件が起こる度、
被害者の落ち度を指摘する声が聞こえるのだということを。
「6年間、被害を訴え続けてきたが誰も耳を傾けてくれなかった。」
「やっと今日、私は一人ではないという気持ちになりました。」
声を絞り、しかし力強く、彼女は確かにそう言った。
冷えた体に涙が伝った、
その時6000人の私たちはジェーンさんとひとつだったと思う。

6年前、被害を訴えた彼女を保護するはずの警察は、
病院へ連れて行ってくれと懇願する彼女を12時間以上も拘束した。
「被害届けの事情聴衆なのにまるで犯人のような扱いを受けた。」
と彼女は言った。
そして日本の検察は米兵を不起訴処分とし、
米軍法会議も彼女のケースを取り上げなかった。
2005年に犯人のブローク・ディーンズ兵士に慰謝料を求めた民事訴訟で、
やっとの思いで手にした勝訴判決。
東京地裁が暴行の事実を認定し米兵に対して300万円の支払いを命じた。
けれども、あろうことか米軍は加害者を除隊帰国させ、
現在、ブローク・ディーンズの居場所は分からない。
勿論、慰謝料は一銭たりとも支払われていない。
これが日本の現実、
この事実を何人の日本人が知っているというのか。

2008年沖縄、
米兵による14歳の少女とフィリピン人女性への暴行事件。
沖縄に米軍基地ができたまさにその時から現在まで、
60年以上、毎年レポートされている米兵による性犯罪、
被害届出があるのは全体のわずか9%とも4%とも言われている。
「再発防止」と「綱紀粛正」を繰り返す米軍とその言葉を鵜呑みにし続ける日本政府、
どちらを発するのも天気予報のように変わるリーダー達、
彼らはどこからともなく現われ高い地位に就任しては、
同じアイディアに辿り着き、恥かしげもなく、むしろ誇らしげに、
「再発防止」や「綱紀粛正」の案を口にしたり、
差し出された「再発防止」や綱紀粛正」の案に納得したりする。
そして60年以上もの間、
被害や被害のポテンシャルに苦しんだのはいつも基地の側に暮らす私たちだ、
そしてこれからも、
リーダー達は決して米兵による性犯罪の被害者にはならない。

誰も責任の取れない問題の、
お金でも解決できない問題の、
その全てを被害者に背負わせ続けてきた日米政府、
日本やアジア太平洋の平和のために人身御供が必要だというなら、
米軍基地を置きながら騒音や環境汚染や事件事故を背負わずに、
「再発防止策」を言ったり、納得したりするリーダーたちは、
自らの、あるいは愛する家族の性を差し出すことが出来るというのだろうか。
差し出せないとしたら、何故私達には被害や被害にあう可能性を押し付けていられるのか。

そしてこれは沖縄だけで起こっているのではない。
米軍基地のある所必ず米兵による性犯罪が起こっている。
神奈川、広島、韓国、フィリピン、グアム、ハワイ、オーストラリア、そしてイラク。
イラクでは多くの米兵女性も米兵男性から性暴力を受けている。
イラクでは米兵女性達は身を守るため二人一組で任務にあたっている。
米兵による性犯罪で裁かれる米兵は2006年に前年比24%増と急増している、
そして2947件の米兵性犯罪のうち処罰を受けたのは114人というのが現実だ。

グアムやイラクの女性たちの言葉を私なりに受け継いだ、
「Enough is Enough」
「US MILITARY SEXUAL TERRORIST」
と書いた布やダンボールを持ち、私は雨空を仰いだ。
もう、基地は要らない、
もう、うんざりだ。


被害者の声を発するという、
その過酷であろう役割を担うことを決断したジェーンさん、
自分が最後の被害者であればいいと祈った彼女の、
その心を踏みにじるように多発する米兵による暴行事件。
「死ぬまで忘れられない」
彼女がそう説明した心の痛みに堪えながら、
喉を詰まらせながら、声を震わせながら彼女が話してくれたこと。
私はそれを一生忘れない。


Enough means Enough
私達の声が届くのはいつ?




Posted by shinakosan at 03:36│Comments(6)
この記事へのコメント
 私はテレビで県民大会の様子を見ました。ものすごく短い時間しか流れていなかったけど、ジェーンさんの紹介もありました。
 彼女の勇敢さに敬意を抱いています。警察の対応等、六年前よりはいくらかは進んでいて法テラスなども結構できてきていますよね。
 それは彼女のような人々の声があったからだと思います。私の知り合いや家族がそのような被害にあっていないのも、彼女達の努力があったからだと思います。
 そんな被害を受けないのは、単なる幸運のこと。
 彼女達から目を反らし、わずから責を探そうとすることから得られる安堵ほど浅ましく醜いものはない。そう思います。
Posted by 元宜野湾市民 at 2008年04月04日 07:43
その日はちょうど沖縄から妹分のいとこが来ていて朝の8時前
には上野駅周辺にいたのですが、県民総決起への理解や支持を
呼びかけるプラカードを持った方々が桜が咲き始めた上野公園に
急ぐ人々に何度冷たい目線を浴びせられようと屈せずに訴え続けて
いたのがとても印象的でした。

そういう方々は一般的には革新と区分されているようですが、
別に横断歩道を渡るわけじゃないんだから右とか左とか
カテゴライズされた価値観だけで何だかわかったつもりになって
自分の感性に測る前に思考停止するなんて、ある意味無意識に
自己否定している(もしくはそうさせられている??)ようなものですよね。

兵士たちが必要としているのは~してはいけませんというような
レッスンとか反省期間じゃなくて、人として大切にされることなのかも
しれないですね。でもそしたら戦場で他人に攻撃できなくなるんですかね・・・。軍隊の組織が兵士たちにどのような教育を行っているのか
興味深いところです。
Posted by やんばらー!! at 2008年04月04日 12:51
>元宜野湾市民さん
 そうですね、ジェーンさん(仮名)の働きは大きいと思います。
 私達は、彼女に重い役割を背負わせるのではなく、
 彼女が背負わされた悲しみを下ろすお手伝いをしたいですね。
 被害を受ける可能性のない者は何とでもいえるという話、
 実際に被害を受けた私達、被害を受ける可能性のある私達、
 その私達の声を押しつぶそうという現状は打破すべきですね。

>やんばらー!!
 東京は怖いらしいねー。
 デモにカメラを向けてジーっト撮ってる人がいて気持ちが悪いって。
 そういう沖縄では考えられないことがあるよってこの前お友達が教えてくれた。
 東京にいてデモを白い目で見る人たちの大半は、
 米兵とも米軍基地とも米兵による性犯罪とも無関係でしょう。
 無関係だから分からないというのは当然かもしれないけど、
 無関係だからわからなくていい、「なにあれ」という態度をとっていいというのは、
 そういうのは違うぞって思いますね。
 貴方たちの安全のために性を蹂躙される人たちがいるって知ってる?って、
 そういう風に問いかけてみたいなーって思います、
 まー歩いている人達にじゃなくてどっちかと言えば役人とか政治家とかにだけどね。
Posted by shinakosanshinakosan at 2008年04月04日 19:17
この記事 胸に迫りました。

ちょうど 先日 「告発者」という映画を観て
その感想を mixiに投稿したところでした。

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=29523808&comm_id=2522816

最後の一部分だけ、重複しますが(私が書いた文章ですから) ここに コピペします。

+++

この映画は、それに確実に「ノー」を叫んだ女性の話である。

映画の最後で父は娘にこう言った「お前を誇りに思うよ」。
判決後に裁判官もまたこう言った「あなたの勇気をたたえます」。

そして、この断固とした「ノー」が勝ち取ったものを、さらに応援する社会の話につなげなければならないと思わせられる映画でもある。レイプが奪うものの本質を見極め、確実に裁ける社会を作らなければならない。

報復殺人まで強いられることはなくなったとしても、被害者は今もなお、「告発」という重責を強いられていることに変わりはない。だとすれば告発を受け止める社会を作らなければならない。レイプ犯が一定数社会の中に存在する現実があるからこそ、被害者を孤立させず、告発をしやすくし、暴力の循環を根絶することこそ、私たち第三者の力がつぎ込まれなければならない分野である。

レイプを許さない社会は、人を尊重する社会の基礎である。次なる展開は、私たちのリアルが担っている。

+++

今はここに加える言葉はありません。
分かっていることは、受け渡されたバトンを、更に手渡しあっていくしかないということ。この社会を私たち一人ひとりが作るのだと決意すること。

いつか 遠い私たちが つながりあえるよう。
Posted by sky at 2008年04月05日 15:40
shinakosan

貴ブログの、別エントリーのコメントに対して、
どう反応したものかと思案にくれているうちに、
skyさんのコメントがあって、ほっとしました。

と同時に、読者としてもshinakosanと同じように、不快さや気持ち悪さ、
そして恐怖、を感じていますよ、ということを、
その時にちゃんとコメントできなかったことを、悔やんでいます。

考えすぎなのか、私が悪いのか、というのは、
支えてくれるひとがいないとき、理解者がいないとき、
被害者が追い込まれてしまう心情。

そんなことない! あなたは悪くない!

ここに断言します。

「ジェーンさん」を「ひとりにさせない」ことと、同じ実践だ、
という思いで、この記事のコメントとして書きました。
Posted by やんばるノグチゲラ at 2008年04月07日 02:24
>skyさん
 コメントありがとうございます。
 レイプという犯罪が起こる可能性を米軍基地は持っています。
 それを黙って維持し続ける国々があります。日本もそうです。
 「基地がなければ起こらなかった問題」、
 このフレーズを聞くたびに、「では何故基地を維持し続けるのか」と、
 とても苦しい気持ちになります。もうレイプはたくさんです。
 その「もううんざり」の声が世界中で起こっている、
 それもずーっとながいこと、ウーマンリブがありフェミが流行っても、
 被害者を救う活動や保証を充実させる働きと同じくらい、
 その根源を立つ基地撤去の対策がなされないのは一体なぜか。 
 そう思うととても切なくなりませんか?苦しいですね。
 私は大人として、女性として、オキナワンとして、
 今日も軍人による性犯罪が起こりうるこの土壌を、
 一生懸命維持している自分という歯車の一部について、
 とても嫌な気持ちになっています。


>やんばるノグチゲラさん
 
 コメントどうもありがとうございました。
 本当のところ、本当に落ち込んでしまっていました☆
 
 でももう大丈夫です、どうもありがとうございました。
 
 本当にやんばるノグチゲラさんのメッセージに救われました。
 嬉しい気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました!
Posted by shinakosan at 2008年04月07日 18:18
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